CCA c/o Tokyo
2018-2020年
CCA c/o とは、世界のさまざまな都市でその都市に根ざしたプログラムを個別に展開していくプロジェクトです。CCA c/o は、CCAとは異なる文脈から生まれながら普遍性をもつ課題を発見するためのツールであり、それによって新たなテーマを探し出し、定義し、現在の議論に新しい視点を投げかけることが可能となります。つまりCCA c/o は、CCA自体を変容させる力さえ秘めています。
我々は、多様な文化や場所から生まれつつある、多様なアイデアと視点に強い興味を抱いています。とはいえ、ミュージアムの本館に対する分館や別館といったかたちでの「施設」を新規に作りたいと思っているわけではありません。世界的な視野を持つことが求められる今日のミュージアムは、物理的な建物やハコモノとしてではなく、むしろネットワークとして捉える必要があると思うからです。
「機敏」「形式にとらわれない」といった新しい価値意識を持つCCA c/o は、建築についての刺激的な議論が今まさに行われている場所、あるいは我々に共感するパートナーたちが活動している場所において、真の意味を持つことになります。そのパートナーとは、インディペンデントのキュレーターかもしれませんし、建築家、ジャーナリスト、写真家、編集者、あるいは別の興味深い人物かもしれません。我々はそうした人々をCCAの一員として迎え入れます。我々が彼らを招くこともあれば、我々が彼らのところに出向く場合もあります 。
我々は2018年から2019年にかけて、2014年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で日本館のコミッショナーを務めた建築キュレーター・編集者の太田佳代子氏とコラボレーションしています。太田氏と共同でリサーチを行いながら、CCAが東京で行うプロジェクトへの社会的な関心を高めていく予定です。
2020-2021年プログラム
模型は語る
「模型は語る」は3つの短編ビデオからなる新しいシリーズで、カナダ建築センター(CCA)と、東京を拠点に活躍する建築キュレーター・編集者の太田佳代子氏が共同で制作し、東京とベルリンに拠点を置くスタジオグロス(Studio GROSS)が監督した作品です。日本の現代的都市空間から誕生した最新の建築プロジェクトを紹介しています。
ますます一般的になってきた、参加型デザイン、再プログラミング、最小限の介入といった建築における社会的関与アプローチは、ほとんどの場合予想通りの結果しか生みません。しかしこのシリーズでは、現在の都市部に存在する問題に取り組むため常識に挑戦する作品に焦点を当て、これらの作品の特徴となるアイデアを伝えるための手段として、ビデオならではの特性を利用しています。ビデオは日本語で製作されていますが、英語とフランス語の字幕が付けられています。それぞれのビデオでは、一人の建築家が、作品の根底にある課題、コンセプト、独創性あふれる提案を案内するガイドとして機能させた模型を通して、視聴者を導いていきます。建築の概念を解説し、その概念を身近なものにしたいという思いを実現するため、「模型は語る」は、現代の課題に取り組む3人の建築家がそれぞれの提案を表現できるプラットフォームの役割を果たしています。
2019年プログラム
Meanwhile in Japan
今から40年前、西欧でポストモダニズムが台頭したのと同じころ、日本では何人もの若い建築家たちが実験的な建築を考え出し、建築という行為の意味自体を問いなおす動きが始まりました。そうして実現した建築の多くは個人住宅でしたが、巨大建築に手が及ぶこともありました。日本が急速に消費社会へと向かい、それが民営化により加速するなか、若い建築家たちは建築と社会の関係に根本的な矛盾や違和感を感じ始め、外から輸入された近代化という制度や価値観から自らを解放しようと行動を起こしたのでした。CCAの新プログラム Meanwhile in Japan は、この時代の動きを新しい視点から見なおし、今日の日本建築が直面する課題の本質を問うことを目的とした、新機軸のインタビュー・シリーズです。
プログラムの主人公となるのは原広司、伊東豊雄、長谷川逸子の3人の建築家。各氏の協力を得て、異なるバックグラウンドを持つ4人の学者・建築家のチーム——若林幹夫(社会学)、門脇耕三(建築システム設計)、市川紘司(アジア近現代建築・都市史)、連勇太朗(社会起業)——と太田佳代子(c/o Tokyoキュレーター)が、1970年代後期から1990年代初期までの3人の活動をめぐり、リサーチとインタビューを行います。プログラムの第1段階では、チームが主人公を訪ね、当時の建築プロジェクトの資料だけでなく、手書きのメモ、写真、会合の記録など、彼らの考え方や行動に直接触れることのできる資料を主人公とともに拝見しながら、インフォーマルに話を伺います。第2段階では、先行して行われたアーカイブ調査を反映しつつ、各主人公へのインタビューを行います。それは新しい問いを投げかけるものでもあり、ゲストクリティックを交えたディスカッションへと展開します。
原・伊東・長谷川各氏へのインタビュー・セッションは、いずれも当時の史料がある場所、あるいはご本人に馴染みのある場所で行われます。リラックスした、なごやかな雰囲気でお話しして頂くために、いずれのセッションも非公開としますが、その内容はすぐにCCAのウェブサイトで報告されます。また、3回が終了したのち、すべてのインタビュー、ディスカッション、アーカイブの記録をまとめた書籍が出版されます。
この時代の日本建築は、実験的な表現の百花繚乱として世界に記憶されてきました。チャールズ・ジェンクスやケネス・フランプトンらの評論を通して、日本のさまざまな現代建築が国外に一気に紹介されましたが、議論はほぼ形態や形式に集中していました。Meanwhile in Japan が目指すのは、そうした形式論から次元を移し、急速に近代化していく都市の風景の中で当時の若い建築家たちがどんなビジョンや戦略を描いたのかを掘り起こすことです。さらに、実際どんな試みが成功し、今日に生かされているのか、描かれたビジョンの何が実現し、私たちはそこから何を学ぶべきか、近過去の重要な一幕の現代的な意義について、主人公と語り合いたいと思います。
2018年プログラム
島と村
CCA c/o Tokyo を始動するにあたり、太田氏には、日本のポスト都市的と言うべき動きを捉えたドキュメンタリーの制作を依頼しました。このドキュメンタリーは5つのエピソードから構成されるもので、太田氏が地方の小さな村々や島々を訪ね、地方自治体が建築家に設計を依頼するという従来のシステムとは別に、建築家と地方のコミュニティーの間に新しい交換関係が生まれている状況を探っていきます。
伊東豊雄、アトリエ・ワン、妹島和世、家成俊勝、石川初各氏の活動に焦点を当てたこのドキュメンタリーは、これからCCAがインターネット上で展開していく特集シリーズのトップバッターとして公開しました。「非都市」に焦点を当てたこのドキュメンタリーは、CCAで現在進行中のさまざまな研究にも新たな視点を提供してくれるでしょう。
記事
イベント